「夜明けに、月の手触りを」から、展

【「夜明けに、月の手触りを」から、展】はじまりから、その日までの軌跡

記録④:7月15日『ここに、台本がある』


7月15日。

参加者募集のためのカードが、届いた。
(ちなみにこの絵は、初演のときに浅見二加さんに描いてもらったもの)


届いたカード、めちゃくちゃ可愛いです。とデザインの大沢さんに連絡する。


犀の角へ向かうが、松本~上田間のトンネル工事のせいで到着が少し遅れてしまった。
小上がりスペースのところでは、やどかりハウス に泊まっている方が、ソーシャルワーカーのKさんに相談ごとをしているところだった。

私も交じって少しだけ話す。台本を読んでみることに少し興味がある、と言っていたので、台本をプレゼントして別れた。

 

夕方は、しばらく誰も来なかった。一人考え事をして過ごす。

上演という形に向かう予定でいるけど、誰がどう参加するか分からない進め方で、
本当に上演が可能なのか。いや、そもそも上演すべきなのか……?
「待つ」間は、つい先の手を考えて不安になる。


カフェで作業をしていた犀の角オーナーである舞さんが、「台本、読んでいい?」と、ひとつ購入してくれた。

日が暮れてから、はじめてお会いするYさんが来てくれた。
Yさんは、re-seitouに寄稿している方だったので、お名前を知っていた。
昨日もカフェにいたので、気になって様子を見ていたらしい。
Yさんが台本を読んでいる間、引き続きわたしは考えごとをしていた。

しばらくすると、昨日来てくれたMさん、何度かワークショップに来てくれた高校教師のAさんが、同じくらいのタイミングで来てくれた。

そこに舞さんも加わる。

映画の脚本に親しみがあるYさんは、台本を読んでみた感想として、画についての描写少ない演劇の台本だと、書かれていることに対して、これはどのカメラの角度で撮る画だろうと想像が膨らんでしまい、「頭がシャカシャカしますね………」と言っていた。


その話を聞きながら、今でこそ演劇の台本にはト書きがあるし、行為が書かれている部分が多いけれど、もともとは声の芸能だったんだよなあ、ということを思い返していた。

 

そこに、また、新しく一人。
夕方は誰もいなかったので、休日でも、夜の方が集まりやすいようだった。

新しく来た方に、何を見てきてくださったんですか?と尋ねると

twitterで見て。わたし、“iphone”です。東京から来ました……」と。

「え!? あの iphoneさんですか!」と、つい大きな声が出てしまった。

iphoneさんは、企画名をオンラインで相談する第0回ミーティングに参加してくださった方だった。顔だしNGをルールにしていたので、誰が参加しているのかはログインの名前でしか判断できず、iPhoneからzoomにログインした方は、名前表記が“iphone”。
途中呼びかけるときも、
iphoneさんはいかがですか?」という具合だった。(そして“iphone”表記は二人いた笑)
↓第0回ミーティングについては下記参照

yoakenitukinotezawariwo.hatenablog.com


さて、第0回ミーティングに参加してくれたiphoneさん(以下、iさん)も交えて、5人集まった。登場人物は5人なので、ちょうど一人一役台詞を読める人数。

せっかくなので、全員で一部を読んでみることにした。

読んでみたい役を選んでもらう。
さや・・・iさん
ゆうこ・・・Mさん
しずか・・・舞さん
あさこ・・・Yさん
まき・・・Aさん


5人で、一番最後のシーン《5人の夜明け》を読むことにした。

上手く読む必要は全くなく、声に出して共有し、ただそれを聞く、という時間。
カフェの一角で、“5人の夜明け”が音読された。

音読を聞きながら、この台詞ってこんな聞こえ方をしたっけ、と、これまでと違う印象で聞こえてくる部分がいくつかあった。

たとえば、[終わり]という言葉とか。
2013年、2016年の頃に発話された[終わり]と、今聞く[終わり]は変わっていた。
読み手と[終わり]の関係、わたしと[終わり]の関係、多分それだけではなく、
もっと色んなことが関係して、今日の[終わり]の響きになっている。

文字は変わらなくても、声に出す言葉は身体を伴って、ずっと変わり続けている。

読んでみた感想をシェアしあって、この日は終わった。
東京から来たiさんは、このあと長野で一泊するらしい。

Yさんが、夜、SNSで感想をつぶやいてくれていた。

映画館の帰りにふらりと寄らせてもらった。台本を読む。声に出して読む。なんて不思議な体験だろう。紙の上の言葉は、その言葉の主とは、初めて会ったはずなのに、声に出した途端、昔から知っているような、まるで自分の中にいたような、そんな感覚になった。

 

次の、『ここに、台本がある』は、21日。

“待つ”が肝だ、とつくづく思う。
“待つ”は、何もしないじゃない。より“待つ”には・・・。

 

記録:藤原佳奈



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『夜明けに、月の手触りを』から、展
2023年10月13日~15日 @犀の角

『夜明けに、月の手触りを』から、展 ~2023東京編~
2023年9月17日 (日)@三茶PLAYs 
OPEN 17時半 /START 18時半~

【お知らせ】『夜明けに、月の手触りを』から、展 ~2023 東京編~ - 「夜明けに、月の手触りを」から、展