「夜明けに、月の手触りを」から、展

【「夜明けに、月の手触りを」から、展】はじまりから、その日までの軌跡

記録③:7/14『ここに、台本がある』

7/14(金)

企画に興味がある人と出会う場としてひらく、『ここに、台本がある』。

初日、特にメールで参加希望の連絡はなかったので、誰も来ないかもしれないよな~…と思いながら、犀の角さんの一角に場を準備する。

 

 

カフェの隅に、平台(1枚90cm×180cm)6枚分の場所ができあがった。

結構広い! 茣蓙を敷いて、靴を脱いで入る小上がりスペース。

 

 

台本と、台本が掲載している戯曲集(在庫をまだ抱えている優秀新人戯曲集2016)をセットして、誰かが来るのを待つ。

 

本を読んでぼんやり過ごしていたら、告知物のデザインをお願いしている大沢さんが遊びに来てくれた。

何も決めない船の漕ぎだしが不安で、大沢さんに、
「どうやったら関心持ってくれる人と出会えますかねえ……」と相談する。

私は10年東京に住んで演劇活動をしていたので、
自分のSNSでの発信だと、東京在住の人からのリアクションや連絡が沢山ある。
はるばる上田まで来てくれるのは嬉しいし、大歓迎なのだけど、長野の人が一人も参加しない、という状況になったらさすがに寂しい。
ふらっと来られる場所に住んでいる人とも、出会いたかった。

小説や詩ではなく、未完成のイメージがある『台本』というものがとっつきにくい可能性があるのではないか? 何をするか分からないものに「参加」の意思表明をするのはハードルが高いかもしれない、などなど色々お話しする。

見せる側/観る側の垣根を崩したり、観ているだけではなく参加も、というムーブメントは随分前からあるけれど、“観客”や“お客さん”という立場は、安心してその場にいられるための、重要な関係性なんじゃないか、と、大沢さんと話ながら考えていた。

 

しばらくすると、犀の角のカフェで仕事をしていたEさんが、台本を読みに来てくれた。Eさんとは、re-seitou(下記記事参照)が犀の角で開催していたイベントで一度お会いしたことがあった。

www.shinmai.co.jp

 

ここで、少し脇にそれるけど、松本に住んでいる私がどうして上田にある犀の角に(車で1時間)通い、企画をはじめているか、について少しお話しておきたい。

犀の角は、上田市の海野町商店街にある文化施設。カフェであり、ゲストハウスであり、そして、劇場だ。困りごとがある女性がワンコインで泊まれる“やどかりハウス”をNPO場作りネットと協働で運営していたり、“うえだイロイロ倶楽部”という6歳~18歳の地域社会におけるクラブ活動の場であったり、福祉施設リベルテとの協同企画を定期的に開催していたり、地域の出会いと助け合いの場になっている。

犀の角にいると、子どもたちが走り回っているときもあれば、ゲストハウスの海外からのお客さんが来ていたり、カフェの隅で深刻な悩み相談をしていたり、あるときは台本の読み合わせをしていたり、ふらっと近所のおじさんが一杯飲みに来たり、、
ゆるやかに様々な人が交差している。

こんな劇場と出会いたかった、というのが第一印象だった。

芸術家や愛好家のための劇場ではなく、今を生きる生活の交点として劇場がある。

だから、今回の企画は、犀の角でひらきたい、と思った。
(カフェ一角にスペースをつくる、というのは犀の角の荒井さんのご提案)

 

前述のEさんが台本を読んでいる間、引き続き大沢さんとあれこれ話していると、Mさんが来てくれた。Mさんもまた、犀の角とre-seitouのイベントでお会いした方だった。
(犀の角で開催していた『つつじのむすめ』という民話にまつわるイベントで、三人の著者の『つつじのむすめ』をまわし読みしながら比較し、雑煮を食べながら喋る、という時間で、とても面白かった)


その後、大沢さん、Eさん、Mさんとで、あれこれ話す。

台本について話すわけでもないけれど、台本から派生して話すことは、
ジェンダー」と「土地」のまわりをぐるぐる巡っていた。


“二十歳くらいのころにフェミニズム関連の本を読んで、ずっとおかしいなと思ってきたことは、自分が悪いわけではなかった、と気づいた。”

 

“30過ぎて、「若い女性」から「人間」になった気がする”

“20代半ばのときくらいに「女性は30過ぎたら卵子の質が低下していく」ということが言われはじめて、少子化対策のための政府のキャンペーンだな、と思いながらいた”

“田舎にいると、かぐや姫の気持ちが分かる。結婚させようと色んな人をあてがわれる”

“東京で生まれたけど、東京というか家族が変わっている人達だったから、東京だから、というのは分からない”

“地元の中にいると分からないこと、東京の中にいると分からないことがある。距離ができて知ることがあった”

“20代は、違和感をみないように過ごしてきて、30過ぎて、コロナになって、ガタガタっときた。自分と向き合って考えるようになって”

 

“自分の言葉を表現して誰かに伝える時間を奪われてしまうと、どう伝えていいかが分からなくなってしまう”

 

“母になると、変わることがある気がする”

 

“言葉を知っていると、違和感に気づくことができるんだな”

 

Eさんが、台本の一部分の長台詞を見て、
竹村和子『愛について』の中にあった、著者による詩的な表現の箇所のことを思い出した、と言っていて

読んだことがなかったので、早速ネットで注文した。

Mさんは、演劇や表現活動をやっているわけではないのだけど、
SNSの投稿を見て「これは自分のための企画だ」と感じてくれたらしい。
そういう人が一人でもいるんじゃないか、と思って始めたので、嬉しかった。

明日もまた来ます、と言ってMさんは帰っていった。

 



記録:藤原佳奈


『夜明けに、月の手触りを』から、展
2023年10月13日~15日 @犀の角

『夜明けに、月の手触りを』から、展 ~2023東京編~
2023年9月17日 (日)@三茶PLAYs 
OPEN 17時半 /START 18時半~

【お知らせ】『夜明けに、月の手触りを』から、展 ~2023 東京編~ - 「夜明けに、月の手触りを」から、展