「夜明けに、月の手触りを」から、展

【「夜明けに、月の手触りを」から、展】はじまりから、その日までの軌跡

記録⑯:9月5日、『ここに、台本がある』東京・友人のアトリエ編


随分間が空いてしまった記録。
おぼろげな記憶を辿りながら書きます。

9月5日。
2023東京編の打ち合わせを終え、しばらく渋谷で仕事をしたあと、
友人の建築家のアトリエへお邪魔した。

この日は、アトリエを借りて『ここに、台本がある』~東京編~を開催。

もともと、台本と私一人から始まった企画なので、体力的にも色んな場所でやる、ということは想定していなかったのだけれど、東京が舞台となっている戯曲を取り扱いながら、東京で何もしないというのも違和感があるな、と思うようになり、




ぽろっと呟いた私のSNSの投稿を見て、

ふじかな!久しぶり! 夜明け、東京でやることがあったら行きたい! 

と、連絡をくれたのがはじまりだった。


場所があれば『ここに、台本がある』をやりたいのだけれど、と彼女に相談をしたら、快くアトリエを貸してくれることになった。

参加したのは、彼女(Eさん)、彼女のアトリエの社員のAさん、アトリエに共同オフィスとして使っている建築家のIさん、インターンのNさん、私が声をかけたMさんと、Tさん、そしてSさん。(Sさんは、『ここに、台本がある』にこれまでも参加し、犀の角での上演にも参加する)

珈琲を飲みながら、ざっくばらんに台本を読んだ感想や、そこから脱線した話などをする。そして、最後に、台本の『5人の夜明け』を読んだ。

記録できない話もあるので、また、抜粋を。

 

“今36歳で。10年前か……10年前は、今言われているような“女性だから”っていう違和感は、気づいてなかったですね。当時はそれが当たり前だった。だからこの台本は、わたしには、全然、今って感じです。”

 

“世代のことで言えば、わたし今25歳ですけど、わたしたちの世代はもう進んでるというか、学校はジェンダー平等な感じで、特に違和感なくて。でも、学校の外に出たら、あれ?って。ギャップがあるって感じですね”

 

“女性で建築家ってことで、『大目に見られるけど一人前としては扱われてない』、っていう。周りの職人さんも監督さんも男性の世界だから。だから良い図面書いて説得する。それが救いでもあるなって思う。モノが真ん中にあるってことが。”

 

“今、弱者男性っていう言葉あるじゃないですか。あれ、実は一歩進んでるってことだとも思って。なかったことにされてきた立場に名前がついたっていう意味で。”

 

“あさこのとこの台詞を読んで思ったのは、サザエさんみたいなとかちびまるこちゃんみたいなとか、普通っていうイメージと、完璧っていうのが近い気がする。”

 

“あさこの妹への手紙を読んでいるところで、人にお祝いを言うときに、本音で祝えてるか?というのを思った”

 

“結婚式って今あんまりしない人増えたましたよね? どうですか?”
“周り(20代)、確かにあんまりいわゆる式をしないかも”
“昔は、結婚式っていうのはある意味社交の場で、上司がお祝いの言葉を言ったりとか。女は寿退社して、みたいな”
“うわ~時代~”


“男性は今、加害者になりたくないっていうのは、やっぱりありますよ。どこで間違うか分からないので。怖いですよ。今日も入ってきて、あ、男わたし一人だ、って笑”
“そうですよね、こういう場に男性一人だと肩身せまいですよね……”
注)呼んでいたもう一人の男性が急遽来られなくなっていた。
“ほんとは、性別関係なくしなやかに言葉を交わしてみたいって思ってて。でもそれは、まだ色んな傷がお互いにあるから、できる人からやっていくしかないのかもしれない”

 

世代が同じでも、台本をどれくらい“今”と感じるかは違う。そして、時代は確実に進んでいる、と、20代の人と話すと、毎度再確認する。

この日は、半分が建築家、ということで、建築家だからこそ感じる言葉をたくさん聞かせてもらった。
職業によって接する人やはたらき方が違うと思うと、職業(職についていなくても、どうはたらき、日々を過ごしているか)という環境によって、わたしたちは、どんな生き物に変態していくかが、決定されていくのか。

日々過ごす環境について考えることは、建築も演劇も同じことをやっているなあ、と思った。

つくづく、一人で記録をする場ではないなと思う……。
今後、この日のSさん視点の記録も更新されるはず。


記:藤原佳奈