「夜明けに、月の手触りを」から、展

【「夜明けに、月の手触りを」から、展】はじまりから、その日までの軌跡

記録⑩:8月23日『ここに、台本がある』~すでに台本を上演している!?~


8月23日。

松本から信大生のWさんと、同居人のAちゃんを車で乗せて犀の角へ。
毎回参加のMさん、小諸に住むFさんが来てくれた。
この日の犀の角は“うえだイロイロ倶楽部”の活動日。6歳~18歳までの人達が犀の角に集い、大人と一緒に様々なサークル活動に取り組んでいる。子どもたちが走りまわり、いつにもましてにぎやかな日だった。

集った5人で、台本を読んだ感想について話す。
そこから、20代から30代になったときの変化について話していると、“兄弟の防波堤”という言葉が出てきた。

自分の上に兄や姉がいる場合、親からの結婚や就職や家業を継ぐ話の矛先はまずそちらに向かうので、兄や姉が防波堤となって、自分に来るかもしれなかった波を防いでくれる。自分は一人っ子なので、兄弟間のそれぞれの関係の持ち方について、興味深く話を聞いた。

家業を継ぐ話から飛び火して、話題は、“実家の墓”について。墓守の問題は、自分よりも上の世代の話だとばかり思っていたけれど、どうやらそうでもない、というこを知って驚いた。

それぞれの家の墓問題について話していると、犀の角のTさんを筆頭に、“うえだイロイロ倶楽部”の7歳、9歳、13歳の人達が「少し話聞いててもいい?」とやってきた。

親戚の集まりでつまらん話になったのに居合わせなあかん時みたいになりませんかね、大丈夫かな、と言いつつ、引き続き墓の話題は続き、7歳、9歳、13歳の人達はそれを興味あるのかないのか分からない顔で聞いていた。(そりゃそうだ)

しばらくして倶楽部の活動に戻っていった皆さんだが、後でTさんに皆さんの感想を聞くと、7歳、9歳の人はよく分からずつまらなかった、と言っていて、13歳の人は「将来自分も考えることなんだろうな」と思いながら興味深く聞いていたそう。

ちなみに、信大のWさんは13歳のときに『夜明けに、月の手触りを』2016年再演を観てくれていて、そのとき観た感想が「将来こういうことがあるんだろうな」というものだったそうで、墓守の話を聞いていた13歳の予感めいた感想と同じだった。

夜。Fさんは用事があるので帰り、
その後、犀の角に関わっているソーシャルワーカーのKさん、宣伝美術の大沢さんが、
そして終わり間近になった頃に、SNSで情報を見たというUさんが立ちよってくれた。


下記、この日の夜、交わされた一部の覚書。

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“かわいいって、弱いってことなのかな。”

“中学校の校長が『女性は二人以上子どもを産むこと』と発言したのが批判されたのを機に、母が言ってくることが変わった。社会が叩いたら母も変わるんだ、と思った。”

“「女子っぽくないよね」と、彼氏から言われた姉が、女子っぽいものを意識するようになった”

“「女子っぽくない」は褒め言葉かもしれないけど、「ぽくない」が即ち自分の評価として捉えてしまう感覚”

 

“「女はずるい」「女は優遇されている」という感覚が若い世代にあるらしい。マッチョの時代から変化している今の歪のような”

“母親のバックヤードが分かるのかなあと。子どもを産むと”

“今の世代は、昔よりマシな気もするし、半々な気持ち”

“化粧をしろと言われて、職場に化粧をしていくようになった。隙を見せたくなくて。仕事も女性性も両方とる。”

“パブリックな井戸”

“母親になった人のエネルギーって、すごいんだよなあって。ほんとに思う。”

“男性は、どこで救われるのか、現実的に”

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Mさんだったか誰かが、
「戯曲をきっかけに話しているこの場って、脱線はするけど、どうでもいい話にはならないですよね」と言った。

確かに、と誰かが言って、「ずっとなんか切実な話をしているな」と誰かがそれに答えた。

次回の東京編イベントのデザイン案を考えながら話に混じっていた大沢さんが、

「なんか、この場自体が『夜明けに、月の手触りを』の戯曲の上演みたいだなって思いました」と、呟いた。

それぞれが自己紹介をして、それぞれの切実さを語って。
これがそのまま、戯曲の構成と同じだな、って。

ほんまや・・・。
皆で戯曲を読んだりしていると、この場がまるで上演のようである、と感じていたけれど、

戯曲を一切読まなかったこの日も、語る言葉は、どこか戯曲の上演と相似形になっている。

『ここに、台本がある』の後は、毎回、何かが耕されたような、みぞおちがホコホコした感覚になり、帰宅すると疲れがどっと来て泥のように眠る。
なんなんだろうこの感覚は? と思っていたけど、場自体が上演とニアイコールだから、の感覚かもしれない。


夕方参加してくれたFさんは、SNSにこのように書いてくれていた。

その戯曲を読んだり、そこから脱線した話をしたり。気づかぬ内にするすると自分のイエのことを語っていて、こういう場に参加するのは久しぶりだなと思ったり。
田中康夫の『なんとなく、クリスタル』じゃないですが、きっといま話しているのは、この戯曲の私的な”注釈”なのかもとも思ったり。


『ここに、台本がある』の8月開催は残すところあと一回。
上演にどうやって向かっていくのかは、まだ模索中。

 

8月23日の記録は、
下記、Wさん(わかこさん)の記録も一緒にどうぞ。

記録⑩:わかこきろく - 「夜明けに、月の手触りを」から、展



記:藤原佳奈


『夜明けに、月の手触りを』から、展
2023年10月13日~15日 @犀の角

『夜明けに、月の手触りを』から、展 ~2023東京編~
2023年9月17日 (日)@三茶PLAYs 
OPEN 17時半 /START 18時半~

【お知らせ】『夜明けに、月の手触りを』から、展 ~2023 東京編~ - 「夜明けに、月の手触りを」から、展